こんにちは、HIROROです。
今回は岡田茂吉文庫の第18弾としまして、
小谷野敦『里見弴伝 「馬鹿正直」の人生』を取り上げたいと思います。
里見弴(さとみ とん)は明治~昭和期の小説家でして、
文芸雑誌として著名な『白樺』の創刊にも関わった人物です。
代表作は『善心悪心』、『極楽とんぼ』などがあるそうですが、
日本文学に疎いHIROROは知らなかったです・・・。
本書は作家・比較文学者の小谷野敦(こやの あつし(とん))氏の作品でして、
里見弴に関する初の伝記かつ研究書という内容となっています。
本書に岡田茂吉が登場するのを見つけたのは本当に偶然でして、
HIROROが専門とする茶道史研究におきまして、
わかもと製薬創業者の長尾欽弥の茶道について調査をする中で
本書をみていましたら岡田茂吉が出てきたのでびっくりしました。
(長尾欽弥は里見弴を支援していました)
岡田茂吉の登場箇所の全文は以下の通りです。
弴はこの頃、岡田茂吉(一八八二ー一九五五)の掌療法によって、
痔と水虫が治るという経験があったらしい。岡田ははじめ大本教に入り、
戦前は観音教団として独立、戦後これをメシア教団(世界救世教)とし、
今でも浄霊会として存在し、私が学生の頃も、大学のキャンパスで
掌かざしをしている人たちがいた。茂吉は美術収集家でもあり、
弴はその方面で知ったのかもしれないが、茂吉の宗教には少しも
感心しないとし断りつつ、のち弴が語るところでは、この治療効果以来、
掌療法という、掌をかざしただけで健康を回復する法というのを、
何百回も実験してその効果を確認し、自ら行ったという。
(同書、295~296頁より引用)
「メシア教団」 × → 「世界救世(メシヤ)教」 〇
「掌療法」 × → 「浄霊」or「施術」 〇
など、細かな間違いが若干気にはなりますが、
里見弴が岡田茂吉の影響を受けて、いわゆる「手かざし」を行っていたことがわかります。
全体の内容としましては小説家・里見弴の半生が記されたもので、
岡田茂吉に関してはこの部分しか出てきません。
なお、中央公論新社の本のため人物索引もしっかり付いていてありがたいです。
ちなみに以前、中央公論新社から出版された本の執筆に少し関わらせて頂いたことがありましたが、
こうした編集や脚注のお仕事は老舗出版社だけあって本当に素晴らしいと感じました。
①タイトル
『里見弴伝 「馬鹿正直」の人生』
②著者・編者
小谷野敦
③出版社
中央公論新社
④出版年月
2008年12月
⑤サイズ
B6判
⑥頁数
487頁
⑦目次
まえがき
第一章 有島家四男・山内英夫
第二章 「墨汁五合」と『白樺』の創刊
第三章 志賀直哉との決別
第四章 中戸川吉二と『人間』の仲間たち
第五章 お良との出会いと関東大震災
第六章 芥川の自殺、志賀との満州シナ旅行
第七章 明治大学教授、若い女との恋
第八章 鏡花の死と帝国藝術院
第九章 原田日記と「姥捨」
第十章 「無条件降伏」から空白の時代へ
第十一章 お良の死と道元、羽左衛門
第十二章 小津安二郎との日々
第十三章 扇ヶ谷と那須の長老
最終章 非凡長命
トンよ、トンーあとがき
参考文献
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イラスト:きーろ様(Twitter*@ki_ro_iroiro)
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