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田中日佐夫『近代日本のコレクターたち 美術品移動史』(@岡田茂吉文庫)

岡田茂吉文庫
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こんにちは、HIROROです。

今回は岡田茂吉文庫の第21弾としまして、
田中日佐夫『近代日本のコレクターたち 美術品移動史』を取り上げます。

本書は『芸術新潮』にて1973~1977年にかけて連載されました
「戦後美術品移動史」1~60を加筆修正してまとめられたものです。

岡田茂吉につきましては「第五章 宗教界における二大コレクター」として
天理教の中山正善と共に取り上げられていまして、
329~354頁の計26頁の大ボリュームで掲載されています。

ちなみに目次には無い小項目は以下の通りです。

理想郷にある救世熱海美術館
戦後の混乱期と世界救世教
古美術の蒐集
本格的蒐集の開始
岡田教祖の蒐集法
人気の落ちた茶道美術品の蒐集
「湯女図」購入のいきさつ
仏像蒐集の挿話
トルファン出土「樹下美人図」
宇佐美家の蒐集品の入手
「百尺」の蒐集品の入手
「紅白梅図屏風」の購入
多彩な蒐集品
「樵夫蒔絵硯箱」と「藤壺」

現在、MOA美術館と箱根美術館に展示されている著名な美術品について
入手された経緯などが詳細に記されていますので大変興味深いです。

宇佐美家の蒐集品の入手の項では、土地邸宅も購入し
京都平安郷としたことも記されるなど、丁寧な調査がなされています。

国宝 色絵藤花文茶壺の入手に関しましては、
裏話的なエピソードもありますのでご紹介します。

 昭和三十年かその前年の暮かに、荻原と瀬津とがこの長尾の
 藤壺売却希望の話をもってきた。その頃、山崎氏の記憶によれば、
 この藤壺は三井銀行の地下の倉庫にあったという。
 そこに見に行って教祖に報告すると、「あれはどうしても欲しい、
 絵に動きがあって好きだからなんとかして手に入れたい」という。
 値段は三千万円以上である。どうにも仕方がないので、
 五島慶太と争っていた土地を五島に売って、この金を調達したという。
 領収書の金額は三千万円であったが、事実は三千五百万プラス
 百五十万、計三千六百五十万円で購入したのであった。
 一個の壺に三千六百五十万。当時としては桁はずれの値段だった。
 のちに山崎氏はこの件で警察によばれて事情聴取をされたが、
 警察としては、壺一個にこんな金が動くはずがない、
 きっと政治資金かなんかに流れたのではないかと思ったらしい。
 すぐに事情がわかり、じつは三千万以上払っているのだということも
 判って問題にはならなかった。(同書353~354頁より引用)

大きな図書館などでは所蔵されていると思いますし、
たまに古本市場でも出てきますので、
美術が好きな方は是非とも読んでみてください。

①タイトル
『近代日本のコレクターたち 美術品移動史』

②著者・編者
田中日佐夫

③出版社
日本経済新聞社

④出版年月
1981年11月

⑤サイズ
A5判

⑥頁数
445頁

⑦目次
序章 コレクターと美術史
第一章 資本主義形成期における巨人たち
 鈍翁 益田孝ー近代コレクターの原型ー
 三溪 原富太郎ーパトロンでもあった大コレクターー
 戦前の大コレクションとコレクター群像
第二章 鈍翁・三溪のあとをつぐ人たち
 古経楼 五島慶太ー学問に裏づけられた蒐集品ー
 即翁 畠山一清ー茶の美術を受け継ぐコレクターー
 出光佐三ー独自な芸術哲学をもつコレクターー
第三章 関西における戦前からのコレクター
 神戸・大阪周辺の私立美術館
 永遠の文学青年 小林逸翁
 滴翠 山口吉郎兵衛と滴翠美術館
 黒川幸七と黒川古文化研究所
 鶴庵 嘉納治兵衛と白鶴美術館
 金工品から入った古香庵 細見亮市の蒐集
第四章 近代美術のコレクター
 大原孫三郎・総一郎親子ー西洋近代美術の紹介者ー
 石橋正二郎ー近代的合理主義者としてー
 山崎種二ー近代日本画のコレクターー
第五章 宗教界における二大コレクター
 天理教二代真柱・中山正善ーグローバルな視野をもつコレクターー
 世界救世教教祖・岡田茂吉ー宗教の境地と美の極致ー
第六章 戦後の大コレクター
 足立全康の蒐集と足立美術館
 久保惣太郎の蒐集
 正木孝之の蒐集と正木美術館
 矢代幸雄と大和文華館
 平木信二の浮世絵蒐集とリッカー美術館
 佐治敬三とサントリー美術館の蒐集
 駒形十吉の蒐集と長岡現代美術館
 松岡清次郎の蒐集ー世界の市場を廻ってー
 安宅コレクションとその落ち着き先
終章 コレクター種々相
あとがき
参考文献目録
索引

イラスト:きーろ様(Twitter*@ki_ro_iroiro)

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