こんにちは、HIROROです。
今回は岡田茂吉文庫の第十三回目としまして、
藤本光城『世界救世教物語』を紹介します。
本書は今から50年前の1972年に出版されました。
著者の藤本光城氏は歴史作家で、本書以外の作品には
浄土真宗本願寺派第22世法主の大谷光瑞を記した『人間 大谷光瑞』などがあります。
教団関係者ではない外部の作家に依頼するという当時としては新たな試みだったと思われます。
巻頭に戦前の政治家で戦後も各界に影響力をもった亀井貫一郎氏の推薦の言葉がありますのは、
外事対策委員長であった松本明重氏との関係性のようです。以下、本文からの抜粋です。
私が三十五年前に松本明重という青年を、近衛公の日華和平の使命を托するに足る人物と見込んで
大陸に送りましたが、その松本君が、今、私もおよばないような人物となられて、川合総長と御協力、
世界救世教のために全身全霊を打ち込んでおられます。
また巻頭には数葉の写真が挿入されていますが、
カラーと白黒が混ざっているあたりに時代を感じさせられます。
学生運動の巣窟であった京都救世会館がプレイランドとしてにぎわっている様子や
当時の教団二大巨頭の川合輝明氏と松本明重氏がジャージを着て体操(?)している写真をみますとちょっとほっこりします(笑)
本書の内容・構成につきましては少し変わっていまして、
第一章は岡田茂吉の事蹟・聖地を取材する中で、
関連する岡田茂吉のエピソードに触れながら筆を進めます。
第二章ではいくつかのキーワードに基づいて岡田茂吉の生涯を振り返りますが、
編年でまとめるわけではなく、他宗教や他文化の事例と合わせてゆるゆると描かれます。
第三章では一転、出版前年の1971年に開館しました
京都救世会館(旧・立命館大学 恒心館)や公害の話など現代にトリップします。
第四章もテイストが大きく変わり、「岡田教祖と「創世記」」として
130頁弱にわたり散文調で記されています。
第五章は浄霊や美術文化など教義に関わる話を中心に
歴史作家としての表現力を活かして執筆されています。
このように解説するとまとまりがない作品のように思われるかもしれませんが、
それはHIROROの表現力の拙さが問題でして(すいません)、
実際に読むと題目の通り「物語」の様に読み進めることができます。
入手性はやや悪いかもしれませんが、
見かけられたら是非とも読んで頂きたい一冊です。
なおHIRORO所蔵の同書はカバー欠ですが、
カバー絵は岡田茂吉の次男・三穂麿の作画、
題字は日本画家の大家である渡瀬凌雲の筆となっています。
個人的には巻末の「世界救世教幹部名鑑」が
当時の教団幹部の顔写真付きで一覧化されているので一押しです。
①タイトル
『世界救世教物語』
②著者・編者
藤本光城
③出版社
恒友出版
④出版年月
1972年5月
⑤サイズ
A5版
⑥頁数
567頁
⑦目次
推薦の言葉 亀井貫一郎
監修の辞 川合輝明
第一章
聖地の印象
京都池畔亭
熱海瑞雲郷
鋸山
墨田川畔
第二章
観世音
尾形光琳
試練
世の立て直し
一時入信
万教同根
「手」
第三章
京都救世会館
「公害」
ある日の岡田教祖
恐るべき公害
荒廃日本
神と仏
ふたたび公害について
第四章
神と自然、そして文明
大自然のいのち
岡田教祖と「創世記」
浄霊と公害
光り
第五章
岡田教祖と芸能
宗教史のある一面
奇蹟
入信の人びと
地上天国をめざして
岡田教祖と花
洋々たる教団の未来
<巻末特集>世界救世教幹部名鑑
イラスト:きーろ様(Twitter*@ki_ro_iroiro)
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